その方が簡単なのはよく分かっています。物を使ったらすぐ戻す。
ただそれだけのことなのに、日常の中では仕事や家事に追われ、つい忘れてしまいがちです。
その結果、後であちこち探し物をしてストレスがたまり、どんどんスペースが散らかる原因になります。
この「使ったら戻す」を習慣として無理なく身につけるためには、ただ自分の意識を変えようとするだけではなく、周囲の環境を整えること、そして、心構えを落ち着いて再構築することが一番大切です。
素直で簡単なようでいて、日々の行動に深く根づくようになると、この習慣は実は悪くないものではなく、自分自身にも大きな実りと満足をもたらしてくれるようになるのです。
なぜ「使ったら戻す」は難しいのか
「使ったら戻す」ができない原因は、大きく分けて二つの種類があります。
1. 何をどこに戻すのか決まっていない。
使った物を戻す場所が明確に決まっておらず、その場の成り行きで置いてしまうため、後で戻すときに迷う原因となります。
2. そもそも、物の置き場所が変わりやすく、一定していない。
日々の活動の中で場所が変わってしまうと、戻すべき場所もころころ変わり、習慣化されにくくなります。
よくあるのが、「件の付置が混乱している」パターンです。
ある時はここ、別の時はあちらと、物の置き場所が一貫性に浮いてしまうと、人はそれを戻すのが面倒になり、結果的に「後で」「まぁいいか」となりがちです。
これを改善しないことには、いつまでも習慣付けは成功せず、結局はまたごちゃごちゃとした場所に成りさがり、ストレスも増していきます。
まずはここを治さなければ、習慣づくりは始まらないと言っても過言ではないでしょう。
「戻す」を自然にするための二つの作戦
1.物の位置を決める
すべての物に、必ず居場所を指定しましょう。
その際には、物の大きさや使用頻度を考慮して、最も使いやすい場所に設定することがポイントです。
ルールはとても簡単ですが、徹底することが重要です。
別の物をいれない
ひとつのスペースには必ずひとつの種類の物だけを置き、混在させないことで、視覚的にもすっきりし、探し物の時間を削減できます。
見える場所にする
すぐに見つけられる場所に置くことで、使った後に「どこだっけ」と迷うことが減り、自然と戻す行動がスムーズになります。
手に取りやすい高さに置く
頻繁に使う物は、腰から肩の高さに置くと取り出しやすく、戻しやすくなります。
ラベルを貼る
特に共有スペースでは、誰が見ても分かるようにラベルを付けると、家族や同居人も迷わずに物を戻せます。
これらの工夫を取り入れるだけで、戻す場所が明確になり、迷うことなく、自然な流れで片付けられるようになります。
日々の小さな行動の積み重ねが、無理なく大きな変化を生み出していくでしょう。
2.手間を楽にする
物を戻すのに、何段階も手順を踏むと、人はめんどくさくなってしまうものです。
特に、忙しい日常生活の中では、わずかな手間でも積み重なると大きなストレスになり、結果的に物をその場に置きっぱなしにしてしまう原因になります。
引き出しを開けないと戻せない
例えば、文房具や日用品などをしまうためにいちいち引き出しを開ける必要があると、手間を感じて戻す動作が後回しになりやすくなります。
階段を上り下りしないと戻せない
別のフロアに物を戻さなければならない場合、わざわざ移動する手間が増え、ついつい「後でやろう」となりがちです。
これらの小さな「手間」をなるべく減らすことが、「戻す」という行動への心理的なハードルを大きく下げるコツです。
例えば、よく使う物はワゴンやオープンラックにまとめておき、手を伸ばすだけで戻せるようにしたり、よく使う部屋ごとに簡易的な収納スペースを設けたりする工夫が有効です。
ちょっとした配置の見直しで、戻す行動がぐっと楽になり、自然と片付けの習慣が身についていくでしょう。
習慣にするためのステップ
ステップ1:作業を分ける
「使う」と「戻す」をひとつの動作で済ませてしまわず、意識的に作業を分けることを心がけましょう。
これは、それぞれの行動に注意を向けることで、習慣化を効果的にするコツです。相手を変えるように、つい一連の動作になりがちな「使用」と「戻す」を、明確に分けることが大切です。
例:ハサミとハンコを一緒にして、その近くにハサミ用スタンドを置いておきます。
ハサミを使ったら、使用が終わった時点で意識的に「戻す」動作を行います。
こうして「使用」と「戻す」を分けて考えるだけで、習慣化が根づいていくのを実感できるようになります。
ステップ2:チェックリストを作成
「今日使ったものを戻したか」を自分でチェックできるようにしましょう。
簡単なチェックリストを作って、家のよく見える場所に貼り出しておくのも良い方法です。
紙や白板に書くのももちろんOKで、カラーペンを使って楽しくデコレーションすると、より義務に感じなくなります。
日次に経過を記録することで、自分の成長を目で見ることができ、意識を高めると同時に、経過を楽しめるようになります。
この程度の小さなステップが、習慣を根付かせるのに大きな影響を与えてくれるのです。
家族も一緒に、ゲーム感覚で
家族全員が一緒に参加すると、より一層楽しく、自然と習慣付けが促進されます。
日々の小さな行動でも、みんなで取り組むことで達成感が共有でき、ポジティブな連鎖反応が生まれます。
戻せたらシールを付ける
特に小さなお子さんには効果的で、シールを集める楽しみが動機づけにつながります。
一定数たまったらご褒美を用意するのも良いでしょう。
ポイント制度で互いに積極的になる
家族でポイント表を作成し、貯まったポイントに応じてちょっとした特典を設けると、大人も子どもも楽しみながら取り組めます。
週末に「戻し達成賞」を設ける
一週間を通して一番戻しができた人を称えるイベントを作ると、モチベーションが維持されます。
このように「楽しい」「達成感」「みんなで喜び合う」といった体験を日常に取り入れることが、習慣を無理なく根付かせるための大きなカギになります。
家族で協力して取り組めば、家庭全体が明るく、より整った空間を維持できるようになるでしょう。
まとめ
「使ったら戻す」。この簡単なようで難しい習慣を、環境づくりと意識づくりによって、無理なく自然に身につけていくことができます。
はじめは意識しなくても、環境を整えるだけで、するべきことが明確になり、行動がスムーズになります。
素直なようで、この習慣が根づくと、日々の小さなストレスを削減し、定位空間を美しく保ち、心にもゆとりをもたらしてくれるようになります。
それは、結果的に、日々の生活をより満足度の高いものに変えてくれるはずです。
この簡単で相近な実践が、世界を少しだけ美しく変える力を秘めているのです。